水晶デバイスの環境保護使用期限のガイドライン
2007年3月1日に、中国版RoHS「電子情報製品汚染防止管理弁法」が施行されました。中国版RoHSでは、製品に対して環境保護(環保)使用期限を定め顧客へ開示することを要求しています。このため、製品の部品である水晶デバイスについても製品の製造メーカに環保使用期限を開示する必要があります。また、中国版RoHSでは関連業界団体が環保使用期限について指導することを推奨しています。
そこで、当工業会は以下のように水晶デバイスの環保使用期限のガイドラインを設定しました。
水晶デバイスの環保使用期限・・・・20年 (常用環境下での使用)
※対象は、禁止物質の鉛が含有される製品のみ (EU RoHS除外用途も含む)
※2008年3月現在
1. | リードタイプ (シリンダー、缶) | 20年 |
2. | ガラス封止タイプ | 20年 |
3. | モールドタイプ (内部に高温はんだ) | 20年 |
4. | 発振器 (内部接続に鉛はんだ) | 20年 |
※2008年3月現在
設定の経緯
日本水晶デバイス工業会技術委員会の下部組織として、環境対応検討チームを発足し検討を行いました。
期限設定方法として、技術型環保使用期限*1)と概念型環保使用期限*2)を検討した結果、技術型環保使用期限を採用し、高温試験結果よりアレニウスモデル*3)を用いて環保使用期限を算出しました。
現在までの信頼性試験において短いもので5000Hまでの結果が出ていますが、これはアレニウスモデルで算出して29.8年に相当します。これらの試験結果等を参考にして、2008年3月現在では、水晶デバイスの環保使用期限を20年とすることが適切と判断しました。(下記の試験結果はその一例)
なお、今後も信頼性試験は継続していきますので、その結果によって環保期限を延長する可能性もあります。
- *1) 技術型環保使用期限
- 実践又は科学的方法及び試験技術によって確定した環保使用期限。
- *2) 概念型環保使用期限
- 製品の他の使用期限概念と関連付けた方法によって確定した環保使用期限。
- *3) アレニウスモデル
- 化学反応速度の温度依存性を予測する。部品の経年劣化の主因が温度である場合、部品の寿命τはアレニウスの式「τ=A・exp(Ea/kT)」(A,Ea:故障モードごとに固有の定数、T:絶対温度、k:ボルツマン定数)で近似できる。加速試験を行ったり、部品の寿命を推定したりする際に利用する
信頼性試験結果の一例 (参考)
No. | 分類 | 鉛使用箇所・用途 | 試験結果 (発振確認) |
アレニウスモデル (25℃) |
アレニウスモデル (40℃) |
1 | シリンダー | 外部端子に鉛 | 125℃、10,000H | 150年 | 59.5年 |
2 | ガラス封止 | 封止ガラスに鉛 (ガラスリッド) |
125℃、10,000H | 150年 | 59.5年 |
3 | ガラス封止 | 封止ガラスに鉛 (セラミックリッド) |
125℃、5,000H | 75年 | 29.8年 |
4 | モールド (高温はんだ) |
内部に高温はんだ(鉛) | 125℃、10,000H | 150年 | 59.5年 |
5 | モールド (高温はんだ) |
内部に高温はんだ(鉛)、 外部端子に鉛 |
125℃、10,000H | 150年 | 59.5年 |
6 | 応用発振器 (内部はんだ付け) |
内部にはんだ接続(鉛) | 125℃、6,000H | 90年 | 35.7年 |
7 | 応用発振器 (内部はんだ付け) |
内部にチップR等の鉛あり | 125℃、6,000H | 90年 | 35.7年 |
算出の条件設定(電子情報製品の環保使用期限の通則の試験法を採用)
- 活性化エネルギー・・・・0.5eV
- 基準温度・・・25℃/40℃(周辺機器の発熱、携帯など体温を考慮)
- 加速係数・・・・125℃の場合、52.15倍
- 良否判定・・・・発振していること (鉛の漏れ出しは水の浸入しか考えられない)
- 廃棄後の放置は含まない
資料のダウンロード
- 『水晶デバイスの環境保護使用期限のガイドライン』 (88KB)